
みなさんは「英文を書くこと」にどんなイメージを持っているでしょうか。もしかしたら「テストで点を取るために行う、時間がかかって難しい作業」というイメージかもしれません。
ですが、これからの時代、そして将来の皆さんの可能性を広げる上で、「英文を書く力」は驚くほど大切になってきています。大学入試の形が変わってきていること、そして世界がどんどん身近になっている中で、自分の考えを英語で表現できる力が求められているからです。この力がつけば、単にテストの点数が上がるだけでなく、物事を深く考えたり、自分の将来について真剣に向き合ったりする力も自然と伸びていきます。
なぜ英文ライティング能力が必要なのか?日本の教育と世界の視点
日本の学校教育、特に受験勉強は、基本的にはアジェンダが設定された中での競争であり、「自らアジェンダを作り出していく能力」は試されにくい傾向があります。
5教科の学習はよくできるのに、論文や自己分析、エッセイを書けないという学生が圧倒的に多いのが現状です。
日本の教育文化では、文章を丁寧に書き直していく作業の重要性が、日本語でも外国語でも、小中高大の全段階で過小評価されています。自分の考えや科学的知見を分かりやすい文章として表現する教育自体も、非常におろそかになっているという指摘もあります。
一方、米国の大学入試に必要な論文やエッセイでは、自らアジェンダを設定し、仮説を立てて検証していく力が問われます。アメリカのトップクラスの教育機関は「作文教育がわが校の誇りだ」と自負しており、文章を作る力、言葉を使って表現する力を培う努力を徹底しています。
イェール大学のような場所では、現役の弁護士、作家、ジャーナリストなど、普段文章で戦っているプロが作文チューターとして学生を直接指導しています。
大学入試の形式も変化しつつあります。
2016年から東京大学が学校推薦型選抜(旧 推薦入試)を導入するなど、これまでの高等教育の入口に対する反省から入試改革の姿勢が示されています。出願の際に推薦状を必要とする、いわゆる「アメリカ型」とされる入試では、受験生本人が書く志望動機書や学校の先生が書く推薦状が重視されます。
特に推薦状には、試験の点数では測れない、定量化が難しい生徒の「知的体力」が書かれ、具体的に授業でどのような質問をして場を盛り上げたかなど、その生徒にまつわるストーリーが求められます。
これは、大学側が「周りの学生に良い刺激を与える学生」「学びの共同体にプラスの影響がある学生」に入ってきてほしいと考えているからです。アメリカ型の入試は、学生を単なる数字だけでなくストーリーとして捉えて評価します。
このように、自分の経験や考えをストーリーとして語る力は、海外の大学入試だけでなく、国内の推薦入試や将来の様々な場面で重要になってきています。
また、グローバル化が進む現代社会では、ビジネスの世界でも学問の世界でも、アジェンダ設定力や、意見を表明し、意思疎通を行い、合意形成していく力がますます重要になります。これは単に英語の知識があるだけでなく、英語で「考える」ことができ、他者と協働して秩序を形作っていくスキルにつながります。
しかし、日本人は一般的に意見を持つことも表明することも苦手とされており、これは「生徒を管理しやすいように」という教師側の都合や、和合を重んじる社会的背景も影響しています。しかし、国際社会での交渉などでは、意見を出し合い、議論することでしか合意形成はできません。
中学生や高校生のうちに英文ライティングを学ぶことは、こうした将来社会で必要とされる思考力、表現力、論理構成力、そして他者との合意形成能力の基盤を培うことにつながるのです。
英文ライティング能力を伸ばすための基本的な考え方とアプローチ
英文ライティング能力を伸ばすためには、単に英語の単語や文法を詰め込むだけでなく、いくつかの基本的な考え方を理解し、実践することが重要です。
まず、英語を英語のまま把握することが大切です。無理に日本語に訳すのではなく、英語の語順やリズム、そして単語が持つ文化的な背景まで含めて理解しようと試みる姿勢を持ちましょう。
例えば、「apple」と「りんご」は単に同じ果物ではなく、アメリカの「apple」はワックスがけされていたり、丸のままかじって食べるものだったりするのに対し、日本の「りんご」は皮をむいて食べるのが主流で時にはウサギ型にカットして食べるものと、それぞれ異なる文化的なイメージを伴います。
こうした言葉の裏にある文化的背景を理解することも、より豊かで正確な表現につながります。
次に、思考力がライティングの土台となります。
論文やエッセイは、頭の中にあるモヤモヤしたものを言葉にしていく作業であり、自分の意見や考えを明確にする必要があります。
これは、「Why(なぜ?)」という問いに対して「Because(なぜなら)」と答える、つまり根拠を示しながら自分の主張を展開する基本的な思考プロセスと密接に関連しています。なぜそう考えるのか、その根拠は何か、別の可能性はないのかなど、物事を様々な角度から検討し、問いを立て続ける姿勢が、深みのある文章を生み出します。
考えることを楽しむ未知への憧れや勇気も、このプロセスには欠かせません。
また、読書によるインプットは、ライティング能力向上に不可欠です。
検定試験や大学入試の問題文だけでなく、英語で書かれた伝記や小説などを読む経験は、文章の構成や表現方法を学ぶ上で非常に重要です。読書によるインプットなしに、知的な英語を使えるようにはならないと言われています。良質な文章に触れることは、自分の引き出しを増やし、より複雑なアイデアを表現するための語彙や構文を自然と身につけることにつながります。
文章を写経するように読むことで、他者の主張を深く理解する力も養われます。
さらに、英語学習全体を通じて発音を意識することも、ライティング能力に間接的に影響します。
自分で正確に発音できる音は聞き取りやすくなり、言葉の「音」と「意味」は深層で不可分であるため、音が身についていると意味を速く深く理解することにつながります。
特に日本語と英語では音の構造が大きく異なるため、英語に存在しない音を意識し、正確に発音する練習は、単語の区別や定着にも役立ちます。
ライティング能力は、単に「書く」スキルだけでなく、思考、読書、音声認識など、他の様々なスキルと連携することで総合的に伸びていくものなのです。
英文ライティングの具体的な練習方法とコツ
中学生や高校生が英文ライティング能力を効果的に伸ばすためには、いくつかの実践的な練習方法とコツがあります。
まず、基本として「名詞と動詞」で文を組み立てることを意識しましょう。
形容詞や副詞に頼りすぎず、誰が(名詞)どうした(動詞)という核を明確にすることで、分かりやすい文章になります。これは基本的なトレーニングとして非常に重要です。
文章構成においては、結論を最初に述べ、その後に具体的な根拠を説明していくという英語論文の型、いわゆるテンプレートを知っておくと非常に役立ちます。
これは現代のビジネスコミュニケーションやアカデミックコミュニケーションの基本となっており、「結論は最初に言え。理由は三つまでだ」といった、日本語のコミュニケーションでも重要とされる考え方と共通しています。テンプレートを学ぶことは、論理的思考力や、文章に必要な情報を見極める力を養うことにつながります。
大学での学術論文執筆法など、テンプレートや文献の引用方法を学ぶことは、その後の学習や研究において非常に役に立ちます。
具体的な練習としては、日記から始めるのが良いでしょう。
書ける構文や語彙は限られていても構いません。重要なのは、自分で学んだ知識を使って英文を作ってみるプロセスと、「自分ひとりで、最後まで英文を書ききった!」という体験です。最初のうちはスペルや文法のミスは気にしすぎず、「英文を書こうとしている姿勢」が大切です。英文の組み立てに慣れてきたら、徐々にスペルや文法も意識するようにしましょう。
文法学習も、ライティング能力の向上に役立ちます。特に小学校高学年からは、母語である日本語を使った文法学習も効果を発揮し始めます。
文法を体系的に学ぶことで、これまで感覚的に使っていた英語のルール(暗示的知識)を明確にし(明示的知識)、より正確な表現を可能にします。
また、文法学習は効率的に表現の幅を広げ、使用頻度の少ない語彙や表現の「抜け漏れ」を補う役割も果たします。学んだ文法項目を使って積極的に英文を作ってみましょう。特に日常生活で必須の疑問文のフレーズなどを学ぶことも大切です。
そして、書いた文章は添削指導を受けることが理想的です。
日本の教育では文章を丁寧に書き直す作業の重要性が過小評価されがちですが、プロによる細かな添削指導は、自分の間違いに気づき、より洗練された表現を身につけるために非常に効果的です。
指導を受ける際は、現在のライティングのレベルに合わせた的確なアドバイスができる添削者に依頼することが望ましいでしょう。
また、音読や写経などもライティング能力向上につながります。
良い文章を音読することで英語のリズムやイントネーションが身につき、写経のように書き写すことで、文章の構成や表現方法を深く理解することができます。
これらの練習を通じて、表現すること自体を楽しみながら、論理的に考え、効果的に伝える英文ライティングのスキルを磨いていくことが重要です。
ライティングを通じて未来を拓く
英文ライティングの学習は、英語力だけでなく、皆さんの思考力と表現力を大きく伸ばしてくれます。
英語で文章を組み立てたり、考えを表現したりする練習は、母語である日本語の論理構成力や作文力も向上させるという研究もあります。これは、外国語を学ぶプロセスで、言葉のルールや構造を客観的に見る「メタ言語意識」が高まるためです。メタ言語意識は、分析的な思考力にもつながり、学問的な成功にも結びつきやすくなります。
また、ライティングを通じて、自分で「問い」を立て、答えのない問題に取り組む力も養われます。
起業家が新しいサービスを生み出し、研究者が仮説を立てて検証するように、今存在しないものを創り出す力や、不確実性の中で判断する力は、生涯にわたって皆さんの支えとなります。
学びの主導権は常に皆さん自身にあります。
親御さんや周囲の期待や焦りに流されるのではなく、自分が「楽しい」「もっとできるようになりたい」と感じる気持ちを大切にしてください。完璧を求めず、失敗を恐れずに挑戦し、少しでも前進したら自分を褒めてあげましょう。継続することが最終的には大きな力となります。
将来、皆さんが直面する社会は、知識を詰め込むだけでは通用しない時代です。自分の頭で考え、それを言葉にして他者に伝え、議論し、合意を形成していく力が求められます。英文ライティングの学習は、まさにそうした未来を生き抜くための「思考力」と「表現力」を磨く最高のチャンスなのです。
英文ライティングの学習は、時には難しく感じることもあるかもしれません。しかし、一歩一歩着実に練習を重ねることで、確実に皆さんの力となります。そして、その力は、大学入試、将来のキャリア、そして自分自身の成長と、様々な形で皆さんの未来を切り拓いてくれるはずです。
J PREPの季節講習
J PREPでは、季節講習を年3回(春・夏・冬)開講しています。
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