
英語学習において、「読む」力は、単に英文の内容を理解するだけでなく、話す、書く、聴くといった他のすべての英語スキルを支える基盤となります。
リーディング力をしっかりと身につけることは、英語学習全体の効率を高め、より深い理解へと繋がるでしょう。
この記事では、中学生・高校生の皆さんが英語のリーディング力を効果的に向上させるための学習法を、具体的な練習方法やツールの活用術と合わせて紹介します。
英語のリーディング力を伸ばす重要性と学習の基本
英語の学習を進める上で、「読む」能力は非常に重要です。
英文を読む力が伸びることは、英語で考え、英語で表現する力を育むことにも繋がります。
もしリーディングを軽視してしまうと、せっかく他のスキルを練習しても、英語力の維持や向上に良い結果をもたらしにくいことがあります。
多くの学生が英語の文章を読む際に、無意識のうちに英文をそのまま日本語に訳そうと努力する傾向があります。
しかし、英語力を本質的に向上させたいのであれば、不必要に日本語に直さず、英文を英語のまま理解する練習を繰り返すことが重要です。これにより、英語の思考回路を養い、速く正確に内容を把握できるようになります。
最初から完璧を目指す必要はありませんが、文章全体を英語で捉える意識を持つことが大切です。
英文を読むことに慣れるためには、堅苦しく考えすぎず、まずは英語の文字コンテンツを楽しむことから始めるのがおすすめです。自分が興味を持てるテーマの文章を選び、楽しみながら触れる時間を増やすことで、無理なくリーディングの習慣を身につけることができるでしょう。
多読と精読:バランスの取れた読書習慣を身につける
効果的なリーディング力養成のためには、「多読(Extensive Reading)」と「精読(Intensive Reading)」という二つのアプローチを上手に組み合わせることが鍵となります。
多読の習慣を身につける
多読とは、辞書をひかずに大まかな全体像を把握しながら、内容を楽しみつつ大量の英文を読み進める方法です。
多読に適したテキストを選ぶ際の目安は、知らない単語が全体の5%以下に留まるものです。
これにより、文脈から未知の語彙の意味を推測する力が養われ、語彙力を自然に増やしながら、徐々に難しい文章にも挑戦できるようになります。もし自分の強い興味がある分野の文章であれば、多少難易度が高くても、適宜辞書を利用しながら読み進めても良いでしょう。
精読で深い理解を目指す
精読は、一言一句を丁寧に、隅々まで理解しようと読み込む方法です。
分からない単語に出会った場合は辞書をひき、文の構造を正確に把握することを目指します。
多読と精読の理想的な時間の使い方は、おおよそ「多読2に対し精読1」の割合が推奨されています。
精読を効果的に行うための練習方法は以下の通りです。
音読(Reading Aloud)
文章を声に出して読む練習は、語彙を体で覚える「筋肉記憶」を養う上で非常に効果的です。
音源付きの教材を使用する際は、まずモデル音声を聴きながらテキストを指でなぞり、英語のリズムを体験します。次に、モデル音声を追いかけるように音読し、それを録音して自分の発音を確認し、改善点を見つけることも重要です。
暗唱(Memorization)
特に気に入ったフレーズや、将来的に話す場面で使えそうな表現は、暗唱してみましょう。
繰り返し声に出して暗唱することで、単語や表現が自然に口から出るようになり、スピーキング力の土台が作られます。
書写(Copying)
英文をノートに書き写す練習です。
一文一文に集中して向き合うことで、文の構造や細かな表現のニュアンスを深く理解するのに役立ちます。
読む速度の意識
現在の大学入試において、日本の高校生が英文を読む速度は1分あたり75語程度とされています。
これは英語を母語とする人の読書スピード(1分あたり300語)と比べるとゆっくりです。
まずは毎分60語程度を目安に読み始め、徐々に速度を上げていくことを目指しましょう。
効果的な語彙力と文法力の強化法
リーディング力を高めるには、単語力と文法力の両輪をバランスよく鍛えることが不可欠です。
単語と文法の学習は、どちらか一方に偏るのではなく、リーディングを通して互いに補完し合いながら統合的に取り組むことで、より効果的な英語力向上に繋がります。
語彙力の強化
語彙力を効果的に増やすためには、ただ単語を丸暗記するだけでなく、その単語の「使い方」や「成り立ち」を理解することが重要です。
語源を理解する
単語の接頭辞(例:ex-)、語幹(例:plain)、接尾辞(例:-ation)といったパーツを分解して考えることで、その単語が持つ「意味の芯」を捉えることができます。例えば、「explain(説明する)」は、「外へ(ex-)」と「簡素な、平らな(plain)」から成り立ち、「外の人に簡単にする」というイメージで理解できます。
このように語源を学ぶことで、初めて見る単語でも意味を推測できるようになり、記憶に定着しやすくなります。
コロケーション(語法)を意識する
単語が他の単語と自然に組み合わさる「コロケーション」(語法)を学ぶことは、より自然な英語表現を身につける上で欠かせません。例えば、スープを飲むときは「drink soup」ではなく「eat soup」が自然な表現です。
多読を通して、自然な英文に触れる量を増やすことで、コロケーションの感覚を養うことができます。
イディオム(成句表現)の習得
イディオムは、一見簡単な単語の組み合わせに見えても、意味が推測しにくいことがあります。しかし、個々の単語が持つ「核となるイメージ」を理解することで、丸暗記に頼らず、イディオム全体の意味を把握しやすくなります。
文法力の強化
文法は、正確な文章を読んだり書いたりするための土台です。
「使うための文法」を重視する
文法学習は、試験で正解を選ぶためだけでなく、実際に英語を運用するために役立つ理解を目指しましょう。
大学入試用の文法問題集は、文法の基礎知識を復習するのに役立ちます。問題集を解く際には、単に解答を選ぶだけでなく、正解の英文を「フルセンテンスで音読する」練習を取り入れることで、話す、書くための文法知識を定着させることができます。
助動詞のニュアンスを深める
助動詞は、話し手の感情や状況認識、相手への丁寧さや距離感(日本語の敬語に近い役割)を表現する上で非常に重要です。例えば、「can」と「could」の違いは、単なる過去形だけでなく、「現実との距離感」を示す役割も持ちます。英語で書かれた文法問題集を活用し、「英語で英語を学ぶ」というアプローチは、学習効率を劇的に高めることができます。
学習環境の活用とモチベーション維持のヒント
現代の学習環境は、かつてと比べて格段に豊かになっています。最新のテクノロジーや様々なコンテンツを上手に活用することで、英語学習をより楽しく、効率的に進めることができます。
テクノロジーを学習に活用する
動画コンテンツの活用
YouTubeやNetflixなどの動画配信サービスには、あらゆるジャンルの英語コンテンツが豊富にあります。皆さんの好きなドラマ、映画、ドキュメンタリーなどを英語字幕付きで視聴することで、楽しみながらリスニング力(聴き取り力)とリーディング力(字幕を読む力)を同時に鍛えることができます。
生成AIの利用
ChatGPTなどの生成AIは、英語学習の強力なサポートツールとなりえます。
文章の周辺情報を質問する
読んでいる英文について、登場する背景知識や関連情報をAIに尋ねることで、文章の理解を深めることができます。
文法や語法について説明を求める
英文で疑問に思った文法事項や単語の用法について、AIに質問して解説を求めることが可能です。
注意点
生成AIは便利ですが、時として誤った情報を提供することもあります。
そのため、AIの出力はあくまでヒントとして捉え、必ず自分で情報を確認する姿勢が重要です。
学習の継続とモチベーション維持のコツ
「好き」を原動力にする
「好きだからもっと理解したい」という気持ちは、英語学習を継続する上で最も強い推進力となります。自分が心から興味を持てるコンテンツやジャンルを見つけ、それを積極的に英語で学習に取り入れることで、英語の勉強を苦痛ではなく「娯楽」や「気分転換」に変えることができます。
「量」をこなすことの重要性
英語習得においては、何よりも「量」をこなすことが、意外にも多くの問題を解決する早道です。毎日少しずつでも英語に触れる時間を確保し、楽しみながらコツコツと量を積み重ねていくことが、最終的に確かな実力へと繋がります。
「しつこさ」を身につける
一つのコンテンツを何度も繰り返し、徹底的に味わい尽くす「しつこさ」が不可欠です。例えば、気に入ったスピーチや会話の音源を何度も音読し、最終的には暗唱できるレベルまで反復することで、その中に含まれる語彙や語法が自然に身につき、スピーキング力の土台が整います。
英語学習は、短距離走ではなくマラソンのようなものです。焦らず、自分のペースで、楽しみながら継続することが、確実な英語力向上の鍵となるでしょう。
1億人の英語習得法
今回ご紹介した内容について、J PREP代表 斉藤淳が解説した書籍がSBクリエイティブから出版されています。
日本人はなぜ英語ができないのか。それは、「ネイティブが当たり前にやっている英語の学び方」を知らないから。イェール大学元助教授で英語塾を主宰する著者が、日本人の知らない英語習得法を伝授します。
書籍内容
- 受験英語のクセを知る
- 英語と日本語 文字と音の対応関係の違い
- 英単語によって最適な覚え方・教材は異なる
- 試験のための文法と、使うための文法
- 試験対策英語の「構文主義」バイアス
監修:斉藤 淳(さいとう じゅん)
1969年山形県酒田市生まれ。
上智大学外国語学部英語学科卒業(1993年)、イェール大学大学院政治学専攻博士課程修了、Ph.D.取得(2006年)。ウェズリアン大学客員助教授(2006-07年)、フランクリン&マーシャル大学助教授(2007-08年)を経てイェール大学助教授(2008-12年)、高麗大学客員教授(2009-11年)を歴任、2012年4月に帰国、英語塾代表として起業。
2014年に発売された『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』と『10歳から身につく問い、考え、表現する力』がベストセラーとなる。2017年に『世界最高の子ども英語』、2023年に『アメリカの大学生が学んでいる本物の教養』、2024年に『斉藤先生! 小学生からの英語教育、親は一体何をすればよいですか?』を刊行。J PREPでは全体の統括に加え、教材開発、授業、進路指導を担当。
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