J PREP渋谷校で7月31日(日)、高校生の塾生へ向けて、国連WFP元アジア地域局長の忍足謙朗(おしだり・けんろう)さんをお招きした講演会を行いました。
忍足さんは、世界の紛争地や被災地へ駆けつけて食糧を届け、多くの命を救ってきた「食糧支援」のエキスパート。
国連世界食糧計画(国連WFP)に勤務し、命の危険もある過酷な現場のリーダーとして、30年以上にわたり緊急支援の陣頭指揮をとり続けました。
今回は、国内大学受験コースの高校2年生が授業で1年かけて学ぶ内容と知識を現実の世界につなげる試みとして、また、国際的な職業を目指すJ PREP塾生が実社会や将来について考える場として、国際的に活躍するプロフェッショナルに来校いただきました。
講演会の様子を報告します。
お話は、各国の学校で提供される給食の紹介から始まり、データや地図とともに、世界の食糧事情と飢餓の現状へ。
そして、巨大台風で被災したフィリピンなどで緊急支援の指揮をとった忍足さんを1か月にわたり密着取材したNHK「プロフェッショナル ― 仕事の流儀」(2014年放送)を一部視聴しました。
過酷な現場でのミッションや国連スタッフや地元民との協働作業、リーダーとしての行動を映像で見ることで、語るだけでは想像も及ばないスケールの大きな任務を遂行する忍足さんの姿を通して、紛争地や被災地での緊急食糧支援とはどんなものかを垣間見て共有しました。
その上で、国連での仕事やグローバルな環境下でリーダーとして働くことについて、たくさんのエピソードを交えながらお話いただきました。
世界最悪の人道危機と評されたスーダン・ダルフール紛争時は、WFP史上最大規模の3,000人のスタッフを率いて任務を遂行。
当時スタッフは77か国から集まり、この多様性が「楽しいんです」と受け入れながらも、一般的な価値観が通用しない過酷な現場で決断や指揮を執る指針はどんなものだったのか、その行動哲学に話は及びました。
講演後の質疑応答では、国連や国際NGOの違いなど、国連の仕事やオペレーションに関するものに加え、具体的な場面で何を考えたか、どんな配慮が必要か、大切なことは何かといった忍足さんの信念や哲学に触れる質問が次々に寄せられました。
国内大学受験の高校2年生コース(EA580/570)では、授業で扱うテーマとして、忍足さんが語った行動哲学が含まれます。
今後も、読解教材や英作文、クラスでのディスカッションを重ねながら、自分の考えを深めて明らかにしていきます。
J PREPで活きた学びの機会を提供いただいた忍足さん、
参加してくださった生徒の皆さん、
ありがとうございました。
忍足謙朗(おしだり けんろう)さんプロフィール:
1956年、東京都生まれ。国連世界食糧計画(国連WFP)元アジア地域局長。
School for International Training(アメリカ、バーモント州)で国際行政学を学び、修士号取得。30年以上にわたり国連に勤務し、人道支援、開発支援の現場で活躍。WFPでは、ボスニア紛争、コソボ紛争などの紛争地、カンボジア、スーダンでも大規模な緊急支援の指揮をとる。北朝鮮の食糧支援にも関わり、何度も視察に入った。2015年に帰国し、国際協力に興味をもつ若い世代の育成に貢献している。著書に『国連で学んだ修羅場のリーダーシップ』(文藝春秋)
(NHK「プロフェッショナル ― 仕事の流儀」忍足さん特集)
https://www.nhk.or.jp/professional/2014/0908/index.html