英語は、近代において最初に民主的な政治体制を確立し、発展させた人々によって話されていた言語です。
混迷する現代にあって、言葉による意思疎通や問題解決を通じ、多様な価値観が共存する開かれた社会を維持していくためにも、英語を学ぶ必要性はこれまでになく高まっていると言えます。
J PREP 代表 斉藤淳が、外国語として英語を学ぶ上で、尊重していただきたい原則についてご説明いたします。
原則1:音声こそ言葉を学ぶ基礎
音が分からないと単語が覚えられない
「先生、英単語が覚えられないんですけど、どうしたら良いですか?」
こうした質問を生徒が発するたびに、私は track – truck という二つの単語の組み合わせを発音するよう、お願いしています。英語が苦手という生徒のほとんどは、「トラック、トラック」とカタカナ読みです。
英語の音をカタカナで把握する習慣が身についてしまうと、英語の音を拾えなくなってしまい、英語学習全般の足を引っ張ってしまうのです。カタカナで音を拾っている生徒にとって、荷物を運ぶトラックと、陸上競技場のトラックがどちらに対応するのか混乱してしまっているのです。
日本語話者には、英語の音が難しい
単語を覚えるのも、英語を聞き取るのも、音を区別して発音することから始まります。日本語は、母音5種類、子音16種類からなる、音韻的に単純な言語です。しかもほぼ全ての表音文字に母音が含まれます。英語には、短母音だけで7つ、長母音、重母音合わせて20種類以上の母音があります。子音は少なくとも25種類あり、子音だけで発音することも多く、強弱のアクセント、リズムなど、日本語母語話者にとって音韻的に難しい言語です。
音声に注意を払わないと、スピーキング力、リスニング力だけでなく、実は文法の習得にも支障を来し、結果的に読解力、作文力も停滞してしまいます。
必ずしもネイティブ・スピーカーのような発音を身につける必要はありませんが、「ここを外すと英語にならない」発音のコツは習得することが必要です。「カタカナ英語でも通じれば良いじゃないか」という考えは捨て去る必要があります。応用言語学の知見では、外国語学習において、発音の習得は早期に済ませ、徐々に文法を中心に応用する学習に移行することが望ましいとされます。しかし首都圏では、中学受験の影響もあり、発音を習得すべき年齢で英語をしっかりと学ばず、中学生から文法主体で詰め込むことが行われます。また、多くの学校で英語の発音指導は体系的には行われていません。
こうした前提に立ち、学校で十分な発音指導を行うことは非常に例外的であるという前提で、 J PREP では発音矯正練習プログラムを運営しています。文法知識と並んで、自信を持って音読できる習慣を獲得することが、特に語学学習の入門段階では重要だからです。
原則2:使える文法を身につける
次に、英語を英語で理解するために、また自分の言いたいことを英語で正確に表現するために、文法知識を身につけ、使いこなすことが必要になります。
言葉を習得する上で、母語であっても外国語・第二言語であっても、文法知識は当然ながら重要です。母語として英語を使用する人々も、大学までの教育を受ける過程で、主として作文指導を通じ、英文を正確に書く技術を身につけていきます。外国語として英語を学習する場合、なおさら文法知識を身につけ、使いこなす練習をすることが大切です。
日本語を母語にする学習者の場合、特に中高生の間に英文法の概要を習得していく必要があります。英語圏在住歴のある学習者でも、意識的に文法知識を確認しておくことが、知的な表現力と精密な理解力を獲得するための近道です。
現代英語の標準用法を学ぶ:旧い教材に注意
では、これから英語を学ぶ小中高生は、どのような文法知識を身につけていくべきでしょうか。
学習者のほとんどは、当然ながら現代英語の標準的な用法を学びたいと考えているでしょう。しかし残念なことに、日本国内で流通する英語教材には、かなり多くの誤りがあります。
特に、受験英文法の参考書や問題集には、現代英語を正確に理解する上で必ずしも有益といえない記載が目立ちます。入試問題は往々にして「できる生徒」と「できない生徒」を識別するために、問題にさまざまなパズルを埋め込む必要があります。そのため、必ずしも英語そのものを習得するための教材として適切でないものが含まれてしまいます。
それだけでなく、現代英語の標準的な用法が受験で出題されるようになるまでには、時間がかかります。さらに出題された問題が過去問として整理され紹介される頃には廃れた表現になっていることも多いのです。
教える側で教材をアップデートしていない場合、生徒は「通じない表現」を一生懸命に暗唱することになってしまいます。
例えばある英語塾で使われている教材には What are you? という表現が含まれ、これは職業を尋ねる表現だとの記載があります(例『中学1年実力教室』p.70、『やさしくわかりやすい中1英語』p.60)。
具体的には、
× ”What are you?” “I’m a doctor.”
× “What is she?” “She’s a lawyer.”
などの表現です。これは明確に誤りです。
英語母語話者に確認すればすぐに分かることですが、職業を確認するためにこの表現を用いることはありません。なぜなら What are you? はすなわち「あなたはナニモノですか?」という意味に他ならないからです。もしくは哲学的に「君は何物か?」と問いかける場合もあるでしょう。
職業を尋ねる場合、通常は次のようなやりとりになります。
○ “What do you do?” “I’m a doctor.”
○ “What does she do?” “She teaches English.”
誤って紹介されることが多い “What are you?” は、ハロウィーンで仮装する際のやりとりであれば大丈夫ですが、通常は避けた方が良い表現です。
ジェスチャーも文法の一部
J PREP を作ってすぐの中学1年生クラス(現在のES150)では、某大手出版社による文法問題集を使用しました。その問題集は例文がこなれていて分かりやすかったのですが、一つ重大な問題がありました。ジェスチャーを示すイラストと、例文が一致していなかったのです。当たり前ですがさまざまなジェスチャーは、使用する言語と一致して初めて正しく意図が伝わります。
J PREP では、ジェスチャーやアイ・コンタクトも含め、文法の一部だと考え、指導しています。またこの点において、ただ単に文法問題集を解くだけでは英語学習は完結しないことがお分かりいただけると思います。だからこそ、英語母語講師とのやりとりを通じ、学んでいくことが重要なのです。
日本語からひねり出すと間違い続ける:実は難しい単純現在と現在進行形
従来の学校英語のカリキュラムでは、単純現在と現在進行形は中学1年生で学習します。誰でも理解していると自信を持っているはずの単純現在と現在進行形…実は正確に使いこなすのは非常に面倒です。
例えば自己紹介するときに、「○△学校で英語を教えています」という日本語をもとに、英語をひねり出したとします。
そのような場合、
“I am teaching English at XY School.”
と言ってしまいがちです。しかしこれは誤りです。
自分の職業を表現する場合には単純現在形が普通で、
“I teach English at XY School.”
とすべきところです。あえて現在進行形を使うと、今だけ短期的にそうしているという意味に受け取られます。
J PREP では、日本語から翻訳して英語をひねり出すための文法ではなく、状況に応じて最初から英語で表現ができるための英文法を教えるように努めています。
強調したいのは、「~している」という日本語をもとに進行形を捉えるのは不適切だということです。進行形の意味の中心はあくまで「動作が始まっていて、まだ終わっていない」ことなのです。
厳しい言い方をすれば、自分の職業を現在進行形で表現してしまう人は、まだ「英語の頭脳」を完成させていないのです。
本物の運用能力に到達するために
J PREP では、英語母語講師が教える自然な英語表現を通じ、標準的な英語用法に親しみ、受験文法はその応用編として理解するようにカリキュラムを設定しています。
それだけでなく、十分な英語運用能力を持つ日本語母語講師を採用し、日本語で分かりやすくポイントを解説する体制を整えています。日本語で補助的な説明を加えることで、学校の定期テストや受験準備への橋渡しをしています。また日常の授業では、文法の解説、ドリルだけでなく、音声もあわせて総合的に指導するように心がけています。
原則3:「楽器が弾けるようになる」ための練習を意識し、英語を学ぶ
現音声と文法はクルマの両輪
外国語として学ぶ以上、文法体系を整理しながら身につけることは不可欠です。これを効率的に実現する上で、音声の基礎が重要です。
なぜなら、文法規則の多くは、音声に基づいてできあがっているからです。動詞の三人称単数現在、過去形、形容詞の比較級、最上級、関係代名詞の非制限用法、などなど。実は音声の感覚がないと読んでも聞いても分からないのです。
しかし音声の力だけに頼り、読む経験、考える経験、書く経験をしっかりと蓄積しないと、知的な言語運用能力に到達することができません。音声と文法は、クルマの両輪のようなもので、片方だけ回転しても真っ直ぐ前に進むことはできません。いくら語学の王道でも、真っ直ぐに進み続けないと、習得という目的地にたどり着くことはないのです。
楽譜と鍵盤
例えばピアノが上手に弾けるようになるための練習をイメージしてみましょう。
ピアノを上手に弾くためには、楽譜は読めた方が良いに決まっています。ところが、楽譜が読めるすなわちピアノが弾ける、ではありません。実際に鍵盤に向かってピアノを弾く練習をしなければ、上手に弾けるようにはなりません。所々間違えても、練習を繰り返すことで上達していきます。また上手な演奏にたくさん触れることで、目標ができ、さらに上手になろうとするわけです。
ピアノの練習で楽譜に相当するものは、外国語で言えば文法であり、語彙です。
文法知識は深ければ深いほど望ましく、語彙力も高ければ高いほど理想的です。しかし、実際に間違いながら使う練習をしなければ、上手に使いこなす力はつきません。間違いを繰り返しながらも修正していく、地道な努力が上達の秘訣です。
外国語習得の秘訣
外国語を身につけるための練習では、毎日、コツコツと練習を積み重ねることが必要です。
J PREP では年間45回、授業を通じた指導を提供しています。毎週の授業は、毎週やってくる発表会だと考え、練習しましょう。音声に十分な関心を払いつつ、たくさん読む、聞く、書く、話す。楽しみながら学ぶことで、最終的には大きな成果を手にすることができます。そのための道のりを、 J PREP の教職員一同、案内させていただきます。
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